マタニティ・小児歯科講座の第四講目です。
妊娠中の喫煙は、母体はもちろんお腹の中の赤ちゃんの健康にとって、よいことは何一つありません。世間では公共の場所での禁煙や会社などでの分煙がずいぶん進みました。
さらに大阪市では平成19年4月1日より「路上喫煙の防止に関する条例」がスタートしました。
これらは他人のタバコの煙を吸い込む受動喫煙の健康被害が問題視されているからです。
喫煙が及ぼす身体の影響が伝えられ喫煙のマナーも浸透しつつある今日ですが、私が妊婦教室に通っていた時、妊婦の喫煙防止のお話がどこへ行ってもありました。
妊婦の喫煙が現状としてあり、妊婦やその家族の喫煙が赤ちゃんに及ぼす悪影響の意識がまだまだ低いのかもしれません。
ではなぜ妊婦やその家族の喫煙が悪いのでしょうか。
出生時の体重減少や、流産、早産率の上昇、周産期死亡の上昇、そして赤ちゃんの催奇形性を呼び起こすと言われています。
タバコによる悪影響を及ぼす因子としては、大きく「一酸化炭素」と「ニコチン」が挙げられます。
一酸化炭素は胎児の酸欠状態を引き起こすと考えられています。
ふつう、酸素とヘモグロビンが結合して胎児の組織に酸素を運びますが、一酸化炭素は酸素よりも300倍の強さでヘモグロビンと結びつき、その結果胎児の末梢組織に酸素が運ばれず、酸欠を引き起こしてしまいます。
また、ニコチンは母体の血管を収縮させ、子宮や胎盤の血流量を著しく低下させます。
喫煙によって一酸化炭素やニコチンが胎児への酸素の供給を減らし、胎児の発育を妨げる元となります。
自分がタバコを吸わなくても、夫や家族、職場の同僚などの喫煙によってタバコの煙を吸ってしまう受動喫煙のほうがはるかに多くの有害物質を含んでいます。
受動喫煙のほうがニコチンの濃度は三倍になると言います。
これによって低体重児の出生リスクが高まります。
タバコの煙は、口の中にもさまざまな悪影響を及ぼします。
たとえば、①タバコの煙が口の中に入ると唾液の分泌が低下して口が渇きやすくなるため、虫歯のリスクが高まり、また口臭の原因になります。
②歯茎にメラニンが沈着して黒くなります。
③歯茎の血流が悪くなるので、リスクが高まります。(歯周病の症状が表れにくく、治りも悪くなります。)
④味覚が低下します。
⑤がんのリスクが高まります。(がんは口の中にもできます。)
妊娠は、家族みんなで健康を意識する絶好の機会です。
「産まれてくる赤ちゃんのため」に、家族みんなで考えてみてはいかがでしょうか。