BLOG歯庵~歯科衛生士がお届けするオーラルヘルスの豆知識・当院での治療症例~

2014.01.22

歯科衛生士がお話しする歯の講座⑦ ~かめなくなると どうなるの?~

歯科衛生士がお話しする歯の講座の第七講目です。

最近、子どもが離乳食デビューをしました。
もちろん赤ちゃんはまだ歯が生えそろっていないので、ゴックンと飲み込めるポタージュ状のものからスタートします。
次に舌や歯ぐきですりつぶせるもの、歯がはえ始めたら かめるものへと食事内容が変化していきます。
私たちは普段気にも留めずに食事をしていますが、赤ちゃんの時にこうした過程を みなさんたどってきたのです。
もし今かめなくなるとどうなるのでしょうか?
赤ちゃんと同じようになってしまうのでしょうか。
単純にそれだけではなさそうですよね。
今回はかめなくなると どうなるのかを見ていきたいと思います!

やわらかいものしか食べない食生活になると、どんなことが起こるのでしょうか。

1. 唾液の量が減る
  噛むことと唾液の分泌は密接にかかわっています。唾液には洗浄作用や抗菌作用によって、お口の中を清潔に保ったり、常に中性に保とうとしたりする力があるので、唾液が減ることで口臭が起こりやすくなったり、むし歯にかかりやすくなったりします。
2. あごの運動不足
  噛むためには顔やあごなど多くの筋肉が必要になります。
噛めない(噛まない)と、これらの筋肉が使われないため、筋力が低下していきます。筋力が低下すると、ますます噛めなくなるという悪循環に陥ってしまいます。 また、筋力の低下は顔のタルミやシワといった美容の面にも影響がでてくるといわれています。
3. 栄養バランスの乱れ
  よく噛まなくても食べられる食べ物は、水分や油分が多くなる傾向があります。
そのため、どうしても栄養素が少なくなってしまいがちです。
また、油分の多い食事は、高カロリー・高コレステロールになる場合もあります。
さらに、よく噛めないと食物繊維が摂取しにくくなり不足しがちになるため、便秘になりやすくなる場合もあります。
4. 生活の質(QOL)が低下
  しっかり噛んで食事ができないと、食事が楽しくなくなります。
そうすると、食事の内容が質素になったり、外出したくなくなったりして、社交性に支障がでてきたりすることがあります。

 かめなくなる原因は?

小さい頃から、しっかり噛む習慣を身につけることが大切です。
しかし、食生活の西洋化やインスタント食品の普及などにより、あまり噛まなくても良い食品が増えていて、また、そのような食品をこども達が好む傾向にあります。
このような食習慣を続けていると、噛まない習慣が身につき、お口の発達に支障をきたす場合もあります。
また、高齢者が噛めなくなる原因は「歯の喪失」にはじまり、「入れ歯の不適合」「筋肉や舌の機能の低下」が起こるためと考えられます。
しっかり噛むことができるお口を維持するためには、歯を失わないことが重要です。

かむことの大切さ

よく噛むことは、単に食べものを体に取り入れるためだけではなく、 全身を活性化させるのにたいへん重要な働きをしているのです。
この噛む効用について、学校食事研究会がわかりやすい標語を作りました。
「ひみこの歯がいーぜ」です。
弥生時代の人は現代人に比べて、  噛む回数が何倍も多かったと考えられていますから、 卑弥呼(邪馬台国の女王)だって、きっとしっかりよく噛んで食べていたのではないでしょうか。

  • 「ヒ」肥満の防止
    ゆっくりよく噛んで食べることで、食べ過ぎを防ぎ、肥満の防止につながります。
  • 「ミ」味覚の発達
    食べ物の形やかたさを感じることができ、食べ物の味がよくわかるようになります。
  • 「コ」言葉の発達
    口のまわりの筋肉を良く使うことで脳に流れる血液の量が増えて、脳を刺激するので、子供は賢くなり、大人は物忘れを予防することができます.
  • 「ノ」脳の発達
    脳に流れる血液の量が増えて、脳を刺激するので、子供は賢くなり、大人は物忘れを予防することができます。
  • 「ハ」歯の病気予防
    よく噛むと、唾液がたくさん出ます。唾液には口の中の食べ物のカスや細菌を洗い流す働きがあり、むし歯や歯肉炎の予防につながります。
  • 「ガ」ガンの予防
    唾液に含まれるペルオキシダーセという酵素が、食品中の発ガン性を抑えることでガンの予防につながります。
  • 「イー」胃腸快調
    消化を助け、食べすぎを防ぎます。また胃腸の働きを活発にします。
  • 「ゼ」全力投球
    身体が活発になり、力いっぱい仕事や遊びに集中できます。

よく噛んで食べるための工夫

  • 急いで食べない
    ゆっくりと味わって食べましょう。
    食べ物によって噛みごたえはちがいます。噛みごたえのある食べ物は、1口30回を目安によく噛んで食べましょう。
  • 飲み物で流しこまない
    食べ物が口の中にある時は、飲み物を摂らないようにしましょう。
    よく噛むと、食べ物が細かくなり、自然に飲みこめるようになります。

過去の生活習慣を見つめ直し、問題がありそうな点を少しずつ改善していくことは、私たちの体にとって大切なことです。
ところが、普段から無意識に行っている習慣はどうしても見落としがちです。
そのひとつが「噛む」という行為です。
「噛む」という何気ない、当たり前の行為を見直すことで、よりいっそう健康な体を作っていきましょう。

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