け実体験を盛り込んだマタニティ・小児歯科講座の第41講目です。
そろそろ秋物の準備をしなくてはと思いながらも、まだまだ夏物で十分な日々ですね 🙄
でもスーパーではおいしそうな梨や秋刀魚が並び始めてますね!
さて、前回から「卒乳」を歯科からの視点でお話ししていたかと思いますが、今回は2回目です。
「断乳」から「卒乳」へ
平成14年の母子保健法の改定で母子手帳から「断乳」という言葉が削除されました。
世の中の方向は、「あえて卒乳を促進しない社会風潮」となっています。
述べるまでもなく、母乳が乳児に与える影響には計り知れない効果があります。
しかし半面、長期にわたり母乳、人口乳を摂取している子どもは、むし歯の罹患率が高いことも事実です。
むし歯のみではなく、かみ合わせにも影響してくることを示唆する論文も多く出ています。
今や虫歯予防のために、一律に「卒乳を1歳何か月までに行う」というように指導することは、一般的ではありません。
母親と子どもをとりまく生活環境は多様化しています。
母乳育児が良いといわれる理由
母乳育児の利点には、以下のように、母乳に含まれる成分によるものと、授乳という行為によるものがあります。
そのほかには、出産後の母体の回復を促進することも挙げられます。
成分としてのメリット
赤ちゃんにとって必要な栄養源
●乳児に最適な成分組成で、代謝負担が少ない
●感染症の発症および重症化を抑制する
●こどもの肥満や2型糖尿病のリスクを低下する
母乳はまだ消化機能が不完全な新生児、乳児にとっては不可欠なものであり、機能が正常に働くまでの「代用食」です。
母乳中に含まれる成分には、糖質、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルなどがありますが、このうちもっとも多いのは糖質(乳糖・オリゴ糖)です。
なぜなら、人間にとって脳神経系の構築が最優先であるため、脳の栄養分としてのブドウ糖を産生する糖質がより多く含有されているのです。
母乳は、消化される必要のない完全消化物であるため、唾液や胃液の侵襲もなく、腸に到達します。
また、タンパク質の1つであるラクトフェリンには、①抗酸化作用②抗炎症作用③抗ウイルス作用④免疫調節作用⑤愛情ホルモン作用などの効果があります。
このラクトフェリンは唾液にも多く含まれています。
また、母乳に含まれる感染抑制物質が感染症の発症や重症化を抑制するほか、最近の研究では、母乳で育った子どもは将来肥満や2型糖尿病になるリスクが低くなると示唆されています。
ただし、長所ばかりでなく、母親の感染症や薬の使用により、母乳成分に影響が出る可能性があるという短所もあります。
次回は授乳行為のメリットなど続きます