歯科衛生士がお話しする歯の講座の第59講目です。
新学期が始まり、学生さんや社会人の方々は新しい環境でまだまだ緊張の日々ですよね 😳
桜もほとんど散ってしまいましたが、新緑がさわやかに感じます☆
さて、歯科衛生士がお話しする歯の講座の59講目は、前回の根面う蝕についての続きです。
根面はむし歯の進行も止まりにくい!
その理由をみていきましょう。
根面はむし歯の進行が止まりにくい場所でもあります。
なぜかというと、表面に見えているエナメル質のむし歯は、細菌の酸などにより、表面にあるハイドロキシアパタイトの結晶内の成分が溶けだす(脱灰)ことで進みます。
溶けだした成分は、唾液の作用で結晶内に戻っていきますが、これには時間がかかります。
戻っていくスピードより溶け出すスピードが速い状態が長く続くと、やがて結晶の中身がスカスカになり、ついには結晶の外側がボロッとはがれ落ちて、穴になります。
これが穴のあいたむし歯です。
それに対して、象牙質では、脱灰によりハイドロキシアパタイトの結晶が壊されるのに続き、コラーゲンの層が「コラゲナーゼ」という細菌の酵素により分解されます。
コラーゲンを修復する力は唾液にはないために、壊れたコラーゲンの層はむき出しのまま、新たな酸にさらされることとなります。
エナメル質のハイドロキシアパタイトなら唾液の力で修復されたりもするのですが、象牙質のコラーゲンはそうはいきません。
これが根面の象牙質では歯の進行が止まりづらい理由です。
フッ素配合製品を活用しよう。
むし歯予防の基本は、歯ブラシでプラーク(細菌の塊)を除去することです。
歯の根面をむし歯から予防するときもそれは変わりありません。
その際には、歯の修復(再石灰化)を促すフッ素入りの製品をぜひ利用をしましょう。
歯冠部のエナメル質のむし歯と同じように、根面の象牙質のむし歯予防にも、フッ素には一定の効果が認められます。
とくにフッ素配合歯磨き剤とフッ素洗口液(約230PPm)を日常的に併用すると、ごく初期の根面う蝕を再石灰化することが可能であることが報告されています。
ただ、フッ素はハイドロキシアパタイトに作用するものであり、コラーゲンの分解には抑制しません。
歯周病の予防が根面う蝕の予防に!
虫歯予防は歯磨きによるプラークコントロールがもっとも大切ですが、根面う蝕に限って言えば、大元の原因は「歯肉が下がる」ことです。
ですので、一番の予防は「歯肉を下げない」ことになります。
とくに歯肉を下げる原因となるのが「歯周病」です。
歯周病が進行すると、細菌の炎症のより歯を支える骨が減り、その結果、歯肉が下がります。
歯周病を予防するには、痛みや歯のぐらつきなどを感じる前から、歯科医院で診てもらうことが大切です。
歯周病も根面う蝕と同じく自覚症状がほぼなく進行するので、定期的な検査が欠かせません。
受診の際は歯のクリーニングもしてもらうといいでしょう。
歯肉が下がって根面が見え始めたら、「年だから仕方がない」で終わらせずに、ぜひ歯科医院へ。
お口の状況にあった予防の戦略を一緒に練り直しましょう。