実体験を盛り込んだマタニティ・小児歯科講座の第54講目です。
妊娠後に歯が悪くなったという話を、出産経験のある女性から聞いたことはありませんか?
妊婦さんのお口が虫歯になりやすいということについてお話ししたいと思います。
よくいわれる「カルシウムを赤ちゃんにとられてしまうから」ではありません。
赤ちゃんを育てるために妊婦さんのからだに起きる変化が大きくかかわっているんです。
お口のトラブルを起こしやすくなる変化として、よく指摘されるのが「つわり」です。
歯ブラシをお口に入れると吐き気がしてしまうかたもおられて、丁寧な歯みがきが難しくなるようです。
お口に胃液が逆流し、強い酸に触れた歯の表面が溶けてしまうこともあります。
味の好みも変わります。
甘いものが好きになると、むし歯の大好物、砂糖をたくさんとるようになることもあるようです。
酸っぱいものが好きになる方は、強い酸が歯に触れる機会が増え歯の表面がとけやすくなります。
胃酸がお口のなかに習慣的に逆流したり、酸味の強い柑橘類などを日常的に食べていると、その酸に触れた歯の表面のカルシウムが溶け、エナメル質が薄くなってしまうことがあります。
硬いエナメル質が薄くなると虫歯の穴が開きやすくなってしまうので、胃酸がお口に上がってきたり酸味の強いものを食べた後は、水でブクブクとうがいするといいでしょう。
また、妊娠中はホルモンの影響で唾液が減りやすい傾向です。
だ液が減ると虫歯になりかかった歯を修復してくれる唾液の再石灰化作用が弱まってしまうようです。
なぜ妊婦さんは歯周病にもなりやすいのでしょうか。
子宮やおっぱいを大きくし、胎児が元気に育つようにからだを変化させる女性ホルモン。
歯周病の仲間にはこのホルモンを栄養源とするものがいて、女性ホルモンが豊富な妊婦さんの歯ぐきが大好きで、さかんに増殖し活発に活動します。
そのために妊娠中はふだん歯ぐきが腫れない人も歯周病の初期症状「歯肉炎」になりやすく、歯周病(歯肉炎)の方は病状が進行しやすいのです。
歯周病の炎症は低体重児出産と関連するといわれ、赤ちゃんの成長に影響を与えかねません。
早期に歯科検診を受けて、歯周病を治療・予防しましょう。
体調のよい時間を選んで歯磨きを
ゆったりできる体調の良い時間を選んで、1日1回丁寧に歯磨きをしましょう。
入浴中や寝る前のリラックスタイムなどがおすすめです。
下を向いてみがくと嘔吐感が出にくいです。
下を向いて、唾が口の中に溜まらないようにして歯を磨くと、嘔吐感が刺激されにくく磨きやすいです。
小さめの歯ブラシを
歯ブラシをお口に入れると嘔吐感が出やすい方は、超薄の小型ヘッドと極細ネックの歯ブラシがおすすめです。
続きはまた・・・