歯科衛生士がお話しする歯の講座の第79講目です。
からだにいい食生活を送るために、食べ物・飲み物やサプリメントに気を配って過ごしている方は多いと思います。
ところで、そうして選んだ食材をよく噛んでたべるために重要な、「お口の健康」にも気を配っていますか?
歯が悪くなり、噛みにくいものが増えると、栄養が偏り、体力低下の原因になります。
将来やってくるシニアライフを元気に楽しむための、歯科からのアドバイスをお伝えします。
からだによい食事をしようと、評判のよい食材をいろいろと試しておられる方、増えていると思います。
実際、食と栄養に関する情報は、テレビでもネットでも溢れんばかりです。
「○○を食べるといい」と話題になると、売り切れる店が続出するほど、こうした情報にみなさんとても敏感かと思います。
一方、からだによい食べ物を摂るために不可欠な「歯の健康」や「歯科治療」についての関心はどうでしょうか?
だいぶ温度差があるなと感じてはいないでしょうか。
そこでまず、栄養摂取に欠かせないお口の健康について関心を持っていただくため、お口の衰えがいったいいつ頃からはじまるのかをみていきたいと思います。
定期的に歯科医院のメンテナンスに来院し予防指導や予防処置を受けている方は、高齢になっても数本の喪失で済みますが、痛いときだけ来院する患者さん(歯磨き指導も予防処置も受けていないかた)は、60代、70代で急激に歯を失って、一気にお口の老化が進行しているといわれています。
なんでも噛んで食べられる人は、70歳以上では6割ほどといわれています。
つまり、歯が残っている、あるいは入れ歯などを使ってよく噛めるというかたが噛む能力に問題を抱えていることがわかります。
みなさんは、将来どちら側に入りそうでしょうか?
噛む能力は栄養摂取に大きな影響を与え、高齢者のからだの衰えの一因として、「噛めないことによる栄養不足」が重大視されています。
噛めない人の場合、いったいどんな栄養不足がちになるのでしょうか?
ご高齢になり歯が減って、失った歯の機能を補う歯科治療も十分に受けていないといった状況が続くと、食べられないものが徐々に増え、じつは栄養摂取そのものに問題を抱えがちといわれています。
食べたいものが食べにくいという状態は、だれしも強いストレスを感じます。
ところが、最初は辛いと感じていても、これが毎日続くうちに、つい食べやすいものばかりが箸が向くようになって、食べられない状態に慣れてしまいます。
これはつらいストレスから逃れるための順応なので、無理もないことだといわれています。
そうこうするうちに、食も好みまで次第に変わっていくかたもどうやら多いようです。
「年ととともにあっさりしたものが好きになった」というかたがよくおられますが、じつは食べやすいから好きになってきた、という可能性も否めないので注意が必要です。
それではよく噛めない高齢者に、どんなことが起きるのかを次回もう少し詳しくご説明したいと思います。