歯科衛生士がお話しする歯の講座の第80講目です。
年の瀬も迫り慌ただし日々が過ぎているかと思います。
体調を崩さないように年末を乗り切りましょう!
前回の続きです。
よく噛めない高齢者にどんなことが起きるのでしょうか。
歯が悪くなると、全体的に食が細くなってしまったり、やわらかいものを好んで食べるようになったりします。
すると、食事全体に占めるおかゆやうどんなどのご飯類や麺類の比重が増えがちです。
また、手軽に満足感を得られる、お菓子の間食も増える傾向が見られます。
その結果、糖質過多になりやすく、血糖値のコントロールが難しくなるといわれています。
また、根菜などは、ごくやわらかく調理しないと食べにくいため、市販のお弁当に入っているような根菜類に苦手意識を持つ方も増えてきます。
食物繊維が不足すると便秘などの原因になります。
そしてさらに深刻なのが、たんぱく質不足です。
肉をかみ切ることが難しくなると、自然と箸が向かなくなり、知らず知らずのうちにタンパク質不足に陥りやすいのです。
本当は肉好きのかたも、歯が悪くて食べられないうちに、「歳のせいで好みが変わった」などと自分を納得させて、気づかないうちに習慣化してしまっているケースも見られます。
もともと高齢者になるとタンパク質のからだへの吸収率が落ちますが、そのうえタンパク質の摂取自体も減ってしまうと、深刻なたんぱく質不足になり、筋肉量が減って、体力や免疫力の低下につなっがてしまいます。
肉類に豊富に含まれる鉄分やビタミンA不足も貧血や肌荒れの原因になり、虚弱に陥る一因となります。
噛めない人が陥りやすい栄養の偏りです。
栄養の摂取には、じつは歯の健康がとても大事です。
歯を失い始める盛りの年代は、日々の忙しさに、歯科治療をとりあえずの応急処置ですませがちです。
ふだん歯科に定期受診していないかたも多いかと思います。
しかし、歯を失い始めたころに、歯を悪くした根本的な原因を突き止めておかないと、60代、70代と次々に同じようなトラブルが他の歯にも起きて、ドミノ式に歯を失ってしまうことになります。
たとえば、抜歯後に、とりあえず入れ歯を作っても、その入れ歯を使っていないと、周りの歯が空いたスペースに倒れ、ますます噛みにくくなってしまいます。
そのままほっておいてても悪化するばかりです。
噛みにくさが気になっているのなら、ぜひ早期に歯科医院で改善策について相談してください。
ここでは噛めないまま入れ歯を使わずにいると、将来、低栄養のほかにどんなことがおきやすいかについて次回お話します!