歯科衛生士がお話しする歯の講座の第83講目です。
2月3日節分ですね。
節分は「節を分ける」という字のとおり、季節と季節を分けるものといわれています。
暦のうえではいよいよ冬から春に移り替わっていくタイミングです。
寒さはまだまだ感じられますが、春の訪れが楽しみですね。
さて、朝起きた時、「なんだかあごがくたびれているなぁ」と、感じたことってありませんか?
就寝中の歯ぎしりは、日中に受けたストレスを睡眠中に発散して、脳とからだの健康を保つためのとても大切な行動といわれています。
でもなかには、強い力で歯を削ったり揺さぶったりして重大なトラブルを起こす歯ぎしりもあり、油断大敵といわれています。
歯ぎしりは、キリキリうるさいだけのたんなる悪い癖だと思われがちです。
しかし最近の脳科学の研究によると、忙しい現代に暮らす私たちにとって欠かすことのできない、とても大切な働きをしていることがわかってきています。
さなざまな研究によって明らかになってきているのが「噛むことに」によるストレスコントロール機能です。
かむことによって、脳の高ぶりが落ちつきリラックスする効果が認められており、おそらく「歯ぎしり」もそうした機能、つまり睡眠中にストレスを発散させ、脳とからだを守るストレスマネジメント機能を担っているのだろうと考えられています。
ストレスは内分泌系や免疫系に悪影響を及ぼす万病のもとであることはよく知られています。
深刻な病気を引き起こす重大なリスクとして、胃潰瘍や高血圧との関係などがよく指摘されているので、ご存知のかたも多いでしょう。
つまり「歯ぎしり」は、ストレス社会に生きる私たちにとってとても大切な役割を担っている可能性があり、夜中に少々うるさいとはいうものの、本来は悪い癖などではまったくないともいわれています。
ところが「悪い歯ぎしり」というものがあります。
歯科で問題となっているのが「悪い歯ぎしり」です。
食事のときの噛む力は、数㎏から強くても30㎏程度です。
しかし睡眠中の歯ぎしりは無意識下で行われて抑制がきかないので、50~100㎏を超える力がかかるといわれています。
歯ぎしりをする人は、平均8時間の睡眠中に約40分間も強い力で噛む(通常は15分)といいますから、もしもこれが「悪い歯ぎしり」だった場合、歯をいかに痛めてしまうか、容易に想像できるのではないでしょうか。
しかも、歯の健康を壊すリスクは、こうした力の問題だけではありません。
虫歯や歯周病で歯が弱っているところに「悪い歯ぎしり」が加わった場合、ただの虫歯や歯周病よりも被害が拡大しやすいために、歯科にとって、とても頭の痛い問題になっています。
次回からは「よい歯ぎしり」「悪い歯ぎしり」についてみていきましょう。