歯科衛生士がお話しする歯の講座の第126講目です。
8月ももう終わりですね(;’∀’)
まだまだ残暑が厳しいので体調管理に気をつけたいと思います。
さて、出かけるとき、人と会うとき、マスクをするのが当たり前の時代になりましたが、マスクをしているとき、お口の中で何が起こっているのでしょうか?
マスクは飛沫を防いでくれるありがたい存在ですが、一方で多くの人が気づいていないマイナス面もあります。
マスクをしていると、口を動かしておしゃべりする機会が減ります。
飲み物を飲むのがおっくうになります。
その結果、熱中症対策を怠ったり、口腔内の潤いが減ってしまうのです。
そんな今の時期だからこそ、改めて勉強し直したいのが「唾液」についてです。
唾液は歯の健康を守ってくれるだけでなく、全身の健康にもつながっています。
お口の乾燥を防ぐことでどんないいことがあるのか一緒に探っていきましょう。
唾液には、お口をしっかり機能させるための作用がたくさんあります。
緩衝能
糖分を摂取するとミュータンス菌が酸を排出し、歯面のミネラルが溶けやすい状態になります。
唾液はややアルカリ性のため、口腔内を中性に戻します。
このおかげで、歯が溶けにくい環境がつくられます。
再石灰化
口腔内が酸性に傾くと歯面のミネラルが溶けだし、結晶構造がスカスカになります。
そこにカルシウムイオンとリン酸イオンを補給し、エナメル質の結晶を新しく形成するのがこの力です。
再石灰化の作用によって、歯面がとけてもすぐに穴があくということはありません。
自浄作用
食べかすや細菌を洗い流してくれるのがこの力です。
自浄作用が働きやすい部位(唾液が届きやすい部位)ほど細菌は洗い流され、酸も作られにくくむし歯のリスクは低くなります。
歯を守る以外にも、食べ物を飲み込みやすくしたり、消化しやすくしたりします。
日常生活を支える力も重要といえるのではないでしょうか。
お口のうるおいは、みなさんにとって、元気に暮らしていくうえでなくてはならない要素です。
また唾液の作用はこれだけではありません。
全身の健康を守る力もあるのです。
それが抗菌作用です。
口腔内は、外部と接する大きな粘膜です。
外から細菌やウイルスが侵入したり、食べ物などの汚れで細菌が発生しやすい場所でもあります。
そんな粘膜で活躍するのが、唾液に含まれる抗菌物質たちです。
彼らは、人間にとって良くない細菌の細胞膜を破壊したり、ウイルスの成長を阻害したりと、人知れず私たちの健康を守ってくれます。
中でも、注目したいのが免疫グロブリンです。
この物質は口腔内に細菌やウイルスなどの異物が侵入すると、見つけて取り囲み、粘膜への付着を防ぎます。
そのあと異物は唾液の自浄作用によって洗い流されるので、私たちは元気に過ごすことができています。
ウイルスとともに生活している私たちにとって、心強い味方なのです。
常にマスクをして潤いが減っている今は特に、意識的に唾液を出すことが重要でしょう。