歯科衛生士がお話しする歯の講座の第130講目です。
9月も終わりですね。
朝晩涼しくなってきて、アイスコーヒーからホットコーヒーもおいしく感じるのではないでしょうか。
さて、前回から「噛むことの大切さ」については、なんとなくわかってはいるものの、実際には咀嚼の目的や意義については難しいもので
今回からは、噛むことの効用について考えていきたいと思います。
唾液には食塊形成を補助する役割がある
よく噛んで食塊形成を意識することは大切といわれています。
唾液は食物の消化をサポートし、胃の負担を軽減してくれる
唾液は胃での消化作用に優れた役割を果たしていることがわかります。
咀嚼することによって唾液が分泌されると、胃の負担も軽減してくれます。
咀嚼は学習効果に影響する
咀嚼回数の減少により、空間学習障害を引き起こす可能性が示唆されました。
逆に、よく噛むようにすれば、空間学習障害が回復する可能性もあるといわれています。
咀嚼は認知症高齢者のQOLを改善する
咀嚼の活動性が増し、うまく食べられるようになれば、認知症高齢者のQOLの改善に期待できるのではないかと仮定します。
改良された口腔ケアの提供と一貫性のある食事管理の継続によって、認知症高齢者の咀嚼活動性が増し、QOLの向上につながることがわかったといわれています。
よく噛んで食べると、食後の血糖値の上昇を抑制できる
食物をよく噛んで食べることによって、栄養素の消化と吸収が改善することがわかっており、咀嚼することは、食後の血漿グルコース濃度(血糖値)に影響を与えていると考えられます。
糖尿病の素因がなければ、咀嚼によって食後の急激な血糖値の上昇が抑制されることがわかります。
咀嚼回数は高齢者の食欲を調整する
高齢者は、、嚥下前の食塊形成において、若齢者より多くの咀嚼回数を必要とします。
咀嚼回数が多いと食後の満腹感や満足感が得られやすいことがわかったといわれています。
嚥下直前の食塊形成は誤嚥性肺炎の発症に関連する
食塊形成能が低い高齢者は、嚥下に異常がないようにみえても誤嚥性肺炎の発症率が高いことが明らかとなりました。
そして、今後、嚥下だけでなく、定期的に高齢者の咀嚼を評価し、適切な食形態の選択や食事介助を行うことができれば、誤嚥性肺炎の低減に期待できると考えらます。
咀嚼回数と嚥下直前の食塊は嚥下に影響する
咽頭での食塊が嚥下閾値に達するためには、たとえ咀嚼回数が少なく、食物が十分に粉砕または混合されていなくても、凝集している必要があることが示唆されました。
凝集はもっとも大切ですが、そのうえでよく噛むことによる粉砕、混合がなされていれば、なおよいといわれています。